「街」と「428」。ふたつの群像劇ADVを遊んでほしい
どうもazyです。
今回は2つのゲーム「街 ~運命の交差点~」と「428 ~封鎖された渋谷で~」の話をします。
ジャンルはADV。チュンソフトのサウンドノベルとして発売され、2作共通したゲームシステムを持つ、ある意味とてもゲームしているノベルゲーです。
「街」はPSstoreでダウンロード販売されている完全版を買いPSPかPSvitaで遊ぶか、中古ゲームショップでPS版を探すなりして手に入ります。
「428」はwii版、PS4版、steam版があり、セールで安く買える可能性があるsteam版が一番おすすめです。(スマホアプリ版もあったものの、なんか遊べなくなった)
https://store.steampowered.com/search/?term=%EF%BC%94%EF%BC%92%EF%BC%98
「ゲーム」であるからこそ楽しめる異色のADV
「街」と「428」は一風変わったADVです。
2作に共通するのは「群像劇」。舞台は1998年の渋谷と2008年の渋谷。ひとつの街と共通した時間の中で、出自も目的も違う複数の主人公の物語を追う形で進行します。
「街」で同時に進めるのは8人の主人公。
「爆弾事件解決のために奔走するゲーマー刑事」
「七曜会という謎の組織に入れられてしまう大学生」
「瓜二つなせいでそれぞれ人違いされしまったヤクザと役者」
「彼氏にフラれないようダイエットに燃える太った女の子」
などといった個性的に過ぎる主人公が、5日間の中で全く別の物語を展開していきます。
一方「428」では5人の主人公を中心に物語が進行します。
「誘拐事件解決のために奔走する新米刑事」
「事件に巻き込まれてしまった、渋谷のチーマーの元ヘッドの青年」
「娘が誘拐されて気が気でないメンヘラ研究者」
「雑誌記事をたった1日で書き上げなくてはならない自己中フリーライター」
「バイトで着てた着ぐるみが脱げなくなっちゃったひと」
この魅力的な5人が4月28日の渋谷の街をそれぞれの目的を持って交錯します。
そして、「街」と「428」ではゲーム媒体であるからこそ体験できる、類を見ないシステムを採用しています。
それが「マルチフラグメントシステム」。
これは、ある1人の主人公の選択が、他の主人公たちのストーリーにも影響を及ぼすというシステムです。
例えば主人公Aのシナリオで「倉庫のカギをかける」という選択肢を選ぶと、全く関係ない主人公Bが隠れていたその倉庫に閉じ込められてしまいバッドエンド。なんてことが発生します。
逆に「主人公Cが渋滞を引き起こしたことで、ある人物の到着が遅れ結果的に主人公Dが命を落とさずに済む」という展開も起こります。
ゲーム終盤になると「ある主人公ひとりの選択のせいで複数の主人公がとばっちりを食らう」なんてことも……。
このように些細な選択肢によって他の誰かの人生に影響を与えるという、ゲームでないと楽しめない物語を読むことができます。
「街」と「428」の違い
「街」と「428」。2作とも同じ会社、同じシステムを持つサウンドノベルですが、性質はけっこう違います。
まずは遊びやすさ。
「428」の方が後に開発されているため、当然システムが洗練されていて入手性も良好。2008年の物語のためまだ2018年の今と変わりない感覚で物語に入り込むことができるでしょう。
「街」はそれよりもさらに10年さかのぼる1998年発売のゲーム。遊べるプラットフォームも限られてくる上に、20年前の渋谷が舞台になるために現代とは時代背景が異なっています。
決して物語の質が劣っているわけではありませんが、「ポケベルってなんだYO」とか世代より微妙に引っかかってくる点が出てきてしまうでしょう。
次に、「街」と「428」の全体を貫く雰囲気の話。
「街」で楽しめる8人の主人公たちは背景も目的もてんでバラバラ。渋谷を舞台にそれぞれ違うストーリーを追うことができ、「人間ひとりひとり、同じ状況でもまったく違う物語がある」というテーマを味わうことができます。
逆に言うとそれぞれの物語には統一性が無く、そのくせゲームオーバーとかには絡んでくる訳でもありますが。
「428」の主人公たちも「街」のように背景も目的も違いますが、ひとつの大事件を巡って交わり収束していく物語です。まるでライブアライブの最終編のように主人公の運命が交錯していくストーリーは一見の価値があります。
簡単にまとめると、「街」は「8人がバラバラに織りなす物語」で、「428」は「5人がやがてひとつに纏まる物語」ということです。
ノベルゲーに触れたことがなくても
「街」と「428」はゲームだからこそ楽しめる群像劇ADVだという事は上に書いた通りです。
このゲームは「ゲームは好きだがADVにはあまり触れたことがない」という人に一番オススメできます。
私も「ノベルゲーって文章読んでくだけじゃろ?」と「428」を遊ぶ前までは思っていました。
しかし、このゲームの特殊な部分は「プレイヤーとしてストーリーに大きく介入できるADVである」という点です。
「主人公がなぜかゲームオーバーになった! 何故だ!」という疑問を解決するため、他のシナリオを読み進め原因となる選択肢を修正していく。シナリオ同士の意外なつながりを発見し、行動を推理する。といった楽しみが2つのゲームでは可能なのです。
まさに「遊ぶ小説」であるとも言え、続きが気になるシナリオ展開のおかげで最後までダレることもありません。
地味にバッドエンドの種類が両ゲームとも豊富で、シリアスな死亡バッドエンドからIQ3くらいのあたまわるいギャグゲームオーバー、爆発オチなどがやたらとあります。
また、チュンソフトの粋な小ネタが多く、テキストの各所に散りばめられている用語解説のTIPSはツッコミ所に溢れ笑いが絶えません。
「街」では「篠田正志」、「428」では「御法川実」シナリオが特にお気に入りです。
違う人生に触れ、笑ったり泣いたりできる群像劇ADV「街」と「428」。2作とも大変満足できるゲームです。変な小説を楽しむ感じで遊んでみるのはいかがでしょうか。